-今、日本で起きていること

-製造業の現場で起きている問題は何だと思いますか

今、日本で起きていること外部環境と内部環境それぞれにポイントはあるのですが、まずは外部環境から考えると、1つは製品自体が変わったという事。昔、日本の製造業が強かったときは製品が金属の塊だった訳です。ところが今金属の塊だけで製品は出来ていない。金属とソフトと電子回路の組み合わせ。これら3つの組み合わせで今の製品は出来ている訳ですけれども、日本が一番強かったというのは金属だったんです。

もう1つは、物のライフサイクルが、劇的に短くなっている。車もどんどん買い替えのサイクルが短くなっています。携帯もそうです、毎年というか毎月新しいモデルを発売している。
これだけライフサイクルが短くなると、俗に言う摺合せっていう、時間をかけて品質を上げていくというのが通用しなくなってくる。
摺合せに時間を取っていると、次の新製品が来てしまうので、競合よりも一歩遅れて製品をローンチしてしまうという事になってしまう。
この2点が外部環境っていう意味で大きいです。

一方で内部環境という意味では、日本の組織の多くが複雑化する傾向があるんですよ。
つまり、何とか事業部があって、何とか部、課、係があって、これがどんどん微細化する傾向があるんです。物の複雑化に対応すると、色々な技術が必要になってくるので、その複雑化を助長した訳です。
何とか担当とか、金属だけを担当する部署とか。そうすると、摺合せが更に難しくなる。
これが過去30年間ぐらいで起こっていることですね。

重要なことは一貫性

重要なことは一貫性

―そのような問題に対して御社はどのような認識をしていらっしゃるのですか

強調しておきたいのが、バリューチェーンの視点です。R&Dから始まって、製品企画をして、実際企画が決まったらそれを開発して、仕様を決め、仕様が決まったら設計、その後設計が決まったら量産する。量産したら在庫にしてそれをお客様へお届けする。
この一連の流れがあるんですが、このどれか1個だけを直してもダメなんですよね。どれか1個を直しても、例えば現場としては改善した感はあるかもしれないですけど、経営上の成果、すなわちP/LとかB/Sへのインパクト、あるいは市場投入までのリードタイムとか、それが最終結果として売上への反映というとこまではつながらないんですよ。これは間違いない事実。

例えば、サプライチェーンだけを頑張って競争力を上げるっていうのは、我々の考えでは正論ではないんですよ。ポイントはこのサプライチェーンで回っている物がそもそも競争力があるのかということ。それは売れなければどんなに効率的にまわっても、在庫が少し減るかもねということなんです。
この横串の一貫性がないと経営としてのインパクトが出ないし、仮に出たとしても僅かです。

我々の強み

我々の強み

我々のメンバーの特徴で言うと、8割が製造業出身です。製造業の企画やR&Dをやっていたエースがコンサルタントとしてのトレーニングを受けて、俯瞰する力を身に着けて、実行に落としています。実行に落とすところをやっていたからこそ、なぜつまづくかが分かる訳です。相手の気持ちも分かるのです。
この入り込み方の深さが全然違うというところが、我々の特徴です。

IGPI全体を通して、然るべきタイトルを頂いてクライアント先に行って、1年なり2年なりやって帰ってくるという事が多々あります。ネクステックカンパニーのメンバーであれば、例えば本社付の生産革新室室長のようなタイトルで、各グローバルの開発拠点、生産拠点に部門横断、拠点横断の改革を実行・指揮する権限と責任をもって実行するという事。
お客様の隣に座って本当の中身を知りながらデータ分析をすると、コンサルタントのデータ分析力と現場への理解力とが掛け算になって、アウトプットの品質がものすごく高まります。
他のファームで言ういわゆるハンズオン型じゃない、ましてや宿題持ち帰り型のコンサルティングではなし得ないバリューだと思います。

多様性こそが財産

多様性こそが財産

IGPI全体としての社風だと思いますが、オーナーシップを大事にします。他人事ではなく自分事として考えるのが我々です。一番社内で嫌われるのは、これスコープ外ですよね、というような発言。いや、結果をだすのがあなたのスコープだから、ということ。そこにチャレンジと面白さがあるのだと思います。

例えば製造業向けの戦略的な案件もあるし、海外進出とか、新規事業の立ち上げもあるし、ストップウオッチを使ってヘルメットかぶって現場の生産性の改善、1秒2秒短縮するとか、1円2円切り捨てるとか、そういう世界もあるんですよね。あなたは、この世界の人ですよとか、現場の人ですよというくくり方をしないんです。
この考え方は3~4年もすれば痛感するというか、実感すると思います。
経営者の方と話をする時とか、現場の方と話をする時とか、どういう観点で、どういう引き出しで話をするかというのを日々やるのですが、どういう場面でも結果を出すことが求められます。

結果は出すのですが、現場に期待されている結果と、経営者に期待されている結果は違うので、場合によっては反対かもしれない、こういうトレードオフを反復した経験というのが、必ず次に活きてくる。それが起業であれ、事業会社のどっかのタイトルであれ、必ず活きる。そのような多様性を引っ提げてですね、次のチャレンジに向かっていくような環境があります。

Executive Producer 宮原文恵
こんなに人間臭いコンサルタントにお目にかかったことは過去にないほど、「人」としての魅力が溢れている方だと思いました。紡ぎだされる言葉の一つ一つと、沼田俊介という男の思いや感情が掛け算されることで、この方と一緒に仕事をしたいと心底感じている自分がいることに気付かされました。やはり現場を知り尽くしている人は一味違います。